電力データとAIで高齢者を見守る|三重県東員町の「フレイル検知」最前線

高齢者の健康寿命の延伸を目指して、三重県東員町では中部電力などと共同で「電力データとAIによるフレイル検知」プロジェクトを実施しています。今回は、住民ボランティアと先進技術を組み合わせ、地域全体で健康を支える取り組みの背景や成果、その想いについて伺いました。
そもそも「フレイル」とは?
フレイルとは、加齢に伴って心身が衰える「虚弱」状態のこと。健康と要介護の中間に位置するフレイルは、早期に発見して必要な生活改善などをすることで健康寿命の延伸が期待できる一方、放置すると身体機能や認知機能の低下、さらには社会的孤立につながるリスクが高まります。
三重県東員町では、こうした課題に対して地域住民を中心としたボランティアサポート、及び2020年から新しく始まった電力データとAIによる「フレイル検知」によって対応&改善に取り組んでいます。
三重県東員町健康長寿課|児玉様インタビュー
東員町では、地域の高齢者が安心して暮らせる環境を整えるため、さまざまな取り組みを行っています。その中でも、「電力データとAIによるフレイル検知」は、東京大学などと共同開発し、中部電力が提供する最新技術を活用した挑戦的なプロジェクト。
今回は、東員町健康長寿課の児玉様に、このプロジェクトの導入背景や課題、そして未来への展望についてお話を伺います。
「電力データ×AI=フレイル検知」導入に至った背景を教えてください

もともと、フレイル問題を抱えていた本町では、住民ボランティア(フレイルサポーター)による高齢住民へのサポート活動を行なっていました。そこに、東京大学と三重県との地域連携協定からお話が始まり、東員町が抱えていた課題に、電力データとAIを組み合わせた技術活用の実証現場として東員町を提供できる!というお話が浮上したのです。
今後フレイル問題をどうしていくか議論していた本町にとってはまさに渡りに船。スマートメーターで取得した電力使用データをAIが解析し、生活リズムの変化からフレイルの兆候を検知する仕組みは、現在高齢者を見守るための大きな手助けとなっています。

導入にあたって苦労した点をお聞かせください
各所で話がまとまり、2020年、ようやくプロジェクトを開始しようとした中での新型コロナの大流行。当初予定していた住民説明会の中止も余儀なくされました。しかし、ここで諦めてはかえってフレイルの増加を許す一方。職員たちと相談しあい、職員が1軒1軒直接訪問して説明を行うところからスタートすることにしました。
とはいえ、直接訪問をして、1軒に対し1時間半から2時間説明をさせていただいても「やっぱりよくわからないから」「趣旨は分かるが、データを取られているのはなんだか気味が悪い」と、ネガティブな印象を拭いきれずお断りされることが多々あり、開始当初の導入は非常に苦労したのをよくおぼえています…
ですが、それでも諦めずコツコツ訪問を続けていったことで、徐々に導入をしてくださる方が増えていきました。
「フレイル検知」サービスの導入後、住民の方々の反応はいかがでしたか?

実証開始時ではほとんど認知されていなかった「フレイル」の言葉も、現在では多くの町民に理解されるようになってきました。フレイルの兆候が検知された方には地域包括支援センターの保健師など専門職が必要なアドバイスなどを行っており、利用者からは、「具体的にどのようなことに取り組めば良いかのか分かった」「この先何か困ったことがあったときの相談先が分かって良かった」などの声をいただいています。
実は、本プロジェクトではフレイルの兆候が見られない方も訪問する「アウトリーチ活動」も実施しています。健康増進の協定を結んでいる明治安田生命の営業職員が直接訪問し、アンケートを行なったり、行政情報や地域イベントの案内を届ける取り組みです。
当初はこういったアウトリーチの訪問に対し「迷惑がられるのではないか」と職員たちで心配していたのですが、訪問を受けた方々から「話し相手ができて嬉しかった」「次回も楽しみ」といった声が寄せられ、驚く反面非常に嬉しかったのをおぼえています。
本プロジェクトにおける今後の展望についてはどのようなものを考えておりますでしょうか?
現在、対象者の2割程度にしか同意が得られていませんが、今後はさらに多くの方に同意、活動へ参加いただくことが一番の目標です。また、中部電力提供の「eフレイルナビ」の活用が他自治体へ普及していくことで、日本全体で「誰1人も取り残されない、みんなが安心して生活できる社会の実現」を目指していけたらと考えています。
まとめ
東員町の取り組みは、電力データとAI技術、そして地域の人々の温かな想いが融合するプロジェクト。データによるフレイルの兆候把握はあくまで手段とし、最終的には「誰も取り残さない地域社会の実現」を目指して地域全体で意欲的に取り組んでいます。
本プロジェクトの要である、中部電力提供サービスの「eフレイルナビ」は、徐々にさまざまな自治体への提供を広げています。提供地域やサービスの詳細については公式サイトからご確認ください。
中部電力公式|eフレイルナビ
電力データ×AIで健康活躍のまちを目指す(広報とういん)