更年期障害の症状の一つでもある「ホットフラッシュ」その原因や予防・対処法を解説
監修者情報
山本 信子
ヨガ講師・ライター
2015年にヨガの聖地であるインドのリシュケシュにて資格を取得。
夫の駐在に帯同したインドネシアで日本人、インドネシア人の女性向けにヨガレッスンを行う。
インナーマッスルを鍛える動きのあるレッスンが得意。マタニティヨガ、子連れヨガクラスの指導経験あり。
■資格
・全米ヨガアライアンス(RYT200)
・キッズヨガ指導者養成講座修了
更年期に起こるホットフラッシュとは?
ホットフラッシュは、更年期に現れる代表的な症状のひとつです。では、そもそも更年期とはどのような期間で、ホットフラッシュの他にどのような症状があるのでしょうか?
更年期と更年期障害とは?
そもそも、更年期や更年期障害とはどんなものなのかご説明します。
「更年期」は、閉経前後5年の約10年間を指す言葉です。日本人女性の平均閉経年齢が50歳のため、一般的に45~55歳くらいが更年期にあたります。その更年期に起こるさまざまな症状を「更年期症状」といい、日常生活に支障が出るほど症状が重い場合を「更年期障害」と呼びます。
更年期障害の症状
更年期特有の症状はいくつかあり、人によって現れる症状はさまざま。つまり、症状として現れるのはホットフラッシュだけではありません。顔や上半身のほてり、のぼせ、発汗以外にも次のような症状が表れやすくなります。
- 手足が冷えやすい
- 息切れ、動悸がする
- 寝つきが悪い、眠りが浅い
- イライラして怒りっぽくなる
- くよくよしたり、憂鬱になることがある
- 頭痛、めまいがある
- 吐き気がある
- 疲れやすい
- 肩こり、頭痛、手足の痛みがある
ホットフラッシュとは?
ホットフラッシュは、更年期障害の代表的な症状のひとつです。更年期にさしかかった、もしくは更年期を経た中高年女性の約25%が経験するといわれており、主に下記のような症状が表れます。
- 上半身が暑くなり、のぼせたり、ほてったりする
- 顔が急に熱くなる
- 滝汗が止まらなくなる
ホットフラッシュは、ホルモンバランスや自律神経の乱れなどが原因となるため、不安定な状態になりがちな更年期に起こりやすくなります。周囲の人は暑く感じていないのに、自分だけが暑がっている…そういったことから気づく人も多いのではないでしょうか。顔が赤くなったり、大量の汗をかいたりと他人に気づかれることもあるため、ストレスになるという声も多い症状です。
ホットフラッシュが起こる原因
多くの女性が「もしかして更年期かも?」と気付くきっかけになるのが、顔のほてりや発汗などのホットフラッシュです。では、なぜ更年期になるとホットフラッシュが起こるのでしょうか?
ホルモンバランスの乱れ
更年期に生じるホットフラッシュの主な原因は、ホルモンバランスの乱れです。女性ホルモンのエストロゲンは脳からの指令で卵巣から分泌されていますが、加齢によって卵巣機能が落ちるとエストロゲンの分泌が減少・停止して閉経を迎えます。閉経前後の期間は卵巣機能が十分に働かず、脳からの指令に卵巣が応えることができないため、脳からのホルモンは卵巣の働きを促そうと過剰に分泌されます。つまり、脳は指令を出しているのに体が応えられない、アンバランスな状態になってしまうのです。
自律神経の乱れ
次に、原因として挙げられるのが、自律神経の乱れです。
指令を出す脳の視床下部は、血管や体温、発汗などの調節をつかさどる自律神経をコントロールしている器官。このホルモンの過剰分泌によって自律神経のバランスが乱れ、結果的にホットフラッシュの症状が引き起こされるのです。
自律神経はホルモンバランスの乱れの他にも、ストレスが原因で乱れてしまうことがあります。規則正しい生活を心がけ、ストレスが溜まっていると感じる方は定期的にストレス解消を心がけることが大事ですね。
しかし、このホットフラッシュの症状は一過性で、閉経後しばらくすると体や脳が順応し、症状は徐々に治まります。
ホットフラッシュの対処法
いつどこで症状が出るかわからない「ホットフラッシュ」。自分でコントロールできないがゆえに、さらなるイライラやストレスに繋がってしまいますよね。更年期になっても自分らしくいきいきと過ごすため、ホットフラッシュの対処法をチェックしておきましょう。
脱ぎ着しやすい服装で体温調節を
突然滝汗が出るほどの暑さを感じるのがホットフラッシュの特徴です。サッと脱ぎ着して体温を調節できるカーディガンや上着などを持っておくと安心です。汗が止まらないこともあるため、肌触りが良く通気性や吸水性にも優れた綿素材が良いでしょう。
汗対策をした服装に
発汗の症状が出やすい方は、汗ワキパッドや速乾下着の着用もおすすめ。「汗ジミが目立っていないかな……」と心配する瞬間も減るはずです。長時間の外出の際に不安な方は、肌着の替えを持ち運ぶと安心ですね。
濡れタオルやウェットティッシュで冷却
暑さやのぼせ、ほてりを感じたら、濡れタオルやウェットティッシュを使って体を直接冷やしてみましょう。おでこや頬に当てる方も多いですが、大きな血管が通っている首やわきの下、足の付け根のほうがより体温を下げる効果が期待できます。冷感スプレーや汗拭きシートなどを持ち歩くのもおすすめです。
持ち運び式扇風機や扇子を持ち運ぶ
最近では、持ち運び式のコンパクトな扇風機なども人気です。小さくて持ち運びやすく、騒音も気にならないため周囲を気にせずに使いやすいので、持ち運んでみてはいかがでしょうか。扇子も持ち運ぶ際はスリムになりますし、お好きなデザインを持つことでファッションも楽しめて、憂鬱なホットフラッシュも少し気分が和らぎますね。
ツボを押す
汗が止まらない場合は、「合谷(ごうこく)」という親指の付け根と人差し指の骨が交差する箇所のくぼみにあるツボをゆっくりと押してみましょう。軽くこするだけでも効果があります。
のぼせやほてりがある場合には、頭頂部にある「百会(ひゃくえ)」、もしくは足裏の中央にある「湧泉(ゆうせん)」というツボを同じくゆっくり押してみてください。
ホットフラッシュの予防と軽減方法
ホットフラッシュは、ホルモンバランスが乱れたときに誰にでも起こりうるもの。事前に知識をもって備えておくだけで、つらさも軽減されるはずです。ここからは、すぐに実践できるホットフラッシュの予防&軽減方法をご紹介します。
適度な運動
運動が健康に良いことは広く知られていますが、なかでもウォーキングやヨガ、ストレッチといった有酸素運動は「自律神経の乱れ」を整えるのに効果的です。ホットフラッシュを予防、軽減したいときは、定期的な有酸素運動を心掛けましょう。時間がとれないときは「エスカレーターではなく階段を使う」「髪を乾かしながらスクワットをする」などの“ながら運動”でもOKです。
ホットスラッシュを含む、女性特有の症状にお悩みの方はぜひこちらの記事もあわせてチェックしてみてください。症状の軽減に効果的な簡単エクササイズを多数紹介しています。
バランスの良い食事
ホルモンバランスの乱れを整えるうえで、バランスの良い食事は必要不可欠な要素です。朝昼晩の食事で、栄養バランスの良い食事を心がけるようにしましょう。とくに意識して摂取したいのが女性ホルモンをサポートする「大豆製品」。大豆に含まれるイソフラボンには女性ホルモンのエストロゲンに似た成分が含まれており、女性ホルモンと近い働きをしてくれます。
ストレスをためない
日常的なストレスも自律神経のバランスを乱して、ホットフラッシュを引き起こす要因のひとつ。つらいことがあったときは心を許せる存在に相談したり、好きな音楽を聴いたり、深呼吸やストレッチをしたりして発散していきましょう。悩みやストレスが解消されると少しずつ副交感神経と交感神経のバランスが整い、ホルモンバランスの乱れも落ち着きます。
ホットフラッシュを改善する治療法
ホットフラッシュの症状が重い場合には、医療機関への受診も検討しましょう。不足している女性ホルモンを補う治療や漢方薬の処方、そのほか臨床心理士や心理カウンセラーによる心理療法やカウンセリングなど、一人ひとりの生活習慣に合わせた改善策や運動療法を提案してくれます。自分に合った治療法はなにか、まずは相談するだけでもよいでしょう。
健康的な生活習慣が更年期のホットフラッシュの症状を和らげる
更年期のホットフラッシュは、自分でコントロールできないのがつらいところ。適度な運動やバランスの良い食事、ストレスをためない生活などを心掛けたうえで、つらいときは無理せず医療機関に相談してみましょう。変化する体を労わりながら、自分に合った方法で更年期と向き合ってくださいね。