ノンレム睡眠とレム睡眠の違いって何?眠りの種類や理想的な睡眠周期をご紹介
監修者情報
崎山 紀子
医学博士・保健師
クリエイティブ業界、子育て支援活動等の社会人経験を経て産業看護職へ転身。
大企業、中小企業と数多くの企業を担当し、健康経営に尽力。
社員に寄り添い、企業の生産性向上に貢献できる産業看護職の育成に尽力している。
主な活動・研究:睡眠時無呼吸症候群スクリーニング検査推進活動、健康起因事故の予防研究、等。
■資格
・保健師
・看護師
・第1種衛生管理者
・嚥下防止指導員
・ソーシャルスキルトレーナー
・メディカルアロマセラピスト
・エキスパートヘルスコンサルタント
ノンレム睡眠とは
私たちは眠っている間、レム睡眠とノンレム睡眠がランダムに現れるわけでなく、規則正しく繰り返されています(スリープサイクル:睡眠周期)。睡眠の約75%はノンレム睡眠(深い眠り)で、残り約25%がレム睡眠(浅い眠り)です。健康な眠りでは、レム睡眠は必ずノンレム睡眠の後に現れます。レム睡眠が終わると、再びノンレム睡眠に戻り、これを一晩におよそ90分ごとに(個人差があります)4、5回繰り返されます。まずは、ノンレム睡眠について解説します。
ノンレム睡眠では体も脳も眠っている
ノンレム睡眠では、大脳皮質の神経細胞(ニューロン)の活動が低下してきます。眠りが深いほど、脳全体の血流も低下します。このことからノンレム睡眠は「深い睡眠」と言われます。いわゆる脳の休息状態で、体を支える筋肉は働いています。パソコンに例えるとスリープモードの状態です。自律神経系の機能では、交感神経の機能が弱まり、副交感神経の機能が優位になります。スリープサイクルにおいて、ノンレム睡眠が最初に訪れるのは入眠してすぐ。健康な成人であれば、約10分でノンレム睡眠に入るといわれています。
最初に訪れるノンレム睡眠は1回のスリープサイクルを通してもっとも睡眠の質が高く、眠りも深くなります。このタイミングでぐっすり眠れているかどうかによって、眠り全体の質も大きく変化します。
ノンレム睡眠で得られる3つのメリット
脳の休息時間であるノンレム睡眠。全身を休息させる効果のほか、さまざまなメリットがあります。
メリット①全身の疲れを解消
副交感神経が優位になるノンレム睡眠中は、血圧降下、心拍数、呼吸数が減少、筋緊張や反射が低下し、心身ともにリラックス状態になります。1日の疲れをとって次の日をまた元気に過ごすためには、ノンレム睡眠による脳と身体の休息時間が不可欠なのです。
メリット②忘れたい記憶の消去
ノンレム睡眠には、深いノンレム睡眠(一晩の睡眠の前半に多い)によって、「いやな記憶」を消去する働きがあります。これは“脳の整理”のために必要な作業で、知らず知らずに心の負担になっている悩みや恐怖心などを消し、心を癒してくれます。
メリット③成長ホルモンの分泌
寝る子は育つという言葉があるように、睡眠中には成長ホルモンが多く分泌されています。成長ホルモンの役割は、身体の成長や細胞の修復、代謝調節などを促すことです。睡眠中は均等に分泌されるわけでなく、寝はじめの第一周期に一番分泌されます。そのため、寝はじめの睡眠の深さには特に気をつけなければなりません。成長ホルモンと聞くと身長が伸びたり、骨格の形成だったりということに目がいきがちですが、抗加齢ホルモンの代表格とされ、肌や筋肉、骨、内臓の傷んだ細胞を修復し新陳代謝をサポートし、免疫力や脳、視力の働きを強化するほか、コレステロール値の低下作用もあります。
レム睡眠とは
では、もう一方のレム睡眠について詳しく見ていきましょう。
体は眠り、脳は起きている
脳も身体も眠っているノンレム睡眠と異なり、身体が眠っていて、脳が起きている睡眠状態のこと。“寝ている間も眼球が動く”という話を聞いたことがあるかもしれませんが、この現象(急速眼球運動)はレム睡眠中に起こるものです。レム睡眠中は交感神経が優位で、心拍数、呼吸数も変動しています。
脳の命令が筋肉に伝わらない、つまり身体と脳の間の情報交換をカットした状態で、全身の骨格筋の弛緩にもかかわらず、脳自体は活動しているのです。脳は起きているため、眼球が動いたり、夢をみたりします。レム睡眠の「レム(REM)」とは、急速眼球運動(Rapid Eye Movement)の略です。目覚めの準備段階でもあるため、レム睡眠のときに目覚めるとすっきりします。これらの現象によって鮮明な夢(記憶に残る夢)が作り出されると言われています。
レム睡眠で得られるメリット
レム睡眠には、その日に起こった出来事を「いつ、どこで、だれと、なにをした」か細かく脳に定着させる役割があります。勉強や仕事で新しく覚えたことを過去の記憶や経験と関連づける過程が進みます。記憶された物事が索引されることで、記憶を円滑に呼び起こすことができます。また、楽器の弾き方や車の運転といった技術的な習得についても刻み込むことができます。
ノンレム睡眠とレム睡眠の違い
一口に睡眠といっても、レム睡眠とノンレム睡眠ではさまざまな違いがあります。前述した特徴をふまえながら、両者の違いを確認してみましょう。
ノンレム睡眠 | レム睡眠 | |
---|---|---|
睡眠中の割合 | 75% | 25% |
眠りの深さ | 深い(少しゆする程度では起きない) | 浅い(小さな物音や動きで起きやすい) |
眼球の動き | 遅い | 速い |
夢を見る頻度 | ほとんど見ない(ごく稀) | 多い |
心拍・呼吸 | 安定している(副交感神経が優位) | 変動している(交感神経が優位) |
睡眠の周期について
先ほどご紹介したように、スリープサイクルはノンレム睡眠とレム睡眠を交互に繰り返しています。リズムやそれぞれの時間を詳しくみていきましょう。
睡眠のリズムを4~5回繰り返す
入眠直後にノンレム睡眠に入り、そのあとレム睡眠、ノンレム睡眠、レム睡眠…と繰り返されています。この「ノンレム睡眠→レム睡眠」の現象が、基本の睡眠リズム。一晩に4~5回ずつ繰り返されており、明け方に近づくにつれてレム睡眠の時間が長くなり、眠りが浅くなっていきます。
睡眠サイクルの時間は、入眠後すぐに訪れるノンレム睡眠は約90分間。そのあとのノンレム睡眠は次第に短くなっていき、ノンレム睡眠とレム睡眠を合わせて90分サイクルで繰り返されます。
ショートスリーパーの睡眠周期
ショートスリーパーは6時間未満の睡眠でも十分に健康を維持できる、短時間睡眠体質の人のことです。睡眠時間が5時間以下の日が何日続いても、昼間に眠気がくるなどの自覚症状がなく、健康上も特に問題がないことが特徴です。
ショートスリーパーの睡眠周期の特徴は、レム睡眠、すなわち脳の眠りが浅い時間が少なく、眠りが深いノンレム睡眠の時間はほとんど一般の人と変わらない点です。夢を見たり脳を働かせている状態の浅い眠りが極端に少なく、深く長く眠ることで短時間でも心身の疲れをリカバリーしているのです。
近年はショートスリーパーという言葉が蔓延していますが、実際のショートスリーパーの人数は正確な割合は調べられていませんが、人口当たり約1%未満と考えられています。ショートスリーパーには睡眠に関わる遺伝子に変異があることが分かっています。この変異遺伝子をもっている人は、目覚めやすく、より長時間活動的な状態でいられる脳をもっているとされています。残念ながら、変異遺伝子を持っていない普通の人がショートスリーパーを目指すことはできません。「睡眠時間が短くても平気」と思っていても、日中に眠気を感じたり休日につい寝坊したりする方はショートスリーパーではありません。
ロングスリーパーの睡眠周期
反対に、9時間以上の長眠者を「ロングスリーパー」と呼びます。十分な睡眠をとらないと活動に集中できず、日中も無気力やだるさ、我慢できない強い眠気が続きます。ロングスリーパーの睡眠周期の特徴は、ノンレム睡眠が短くレム睡眠が長いこと。入眠までに時間がかかる場合や睡眠中も深い眠りにつきにくく、浅い眠りを繰り返しています。
睡眠のリズムが崩れてしまうことによるデメリット
「今日くらい無理してもいいか」「多少の寝不足は平気でしょ」と無理を続けると、睡眠のリズムが乱れてさまざまな弊害が生じます。ここからは睡眠サイクルが乱れることによるデメリットを解説します。
睡眠が浅くなる
睡眠のリズムが乱れると、ノンレム睡眠が減少して睡眠の質が低下します。睡眠時間の長さはもちろん、睡眠の質も重要なポイント。質の良い睡眠は疲労を解消するほかにも、ホルモンバランスや自律神経系の調整、免疫力の向上など、私たちの健康維持につながります。
逆に睡眠の質が悪くなると、体だけでなく、脳にも疲労が蓄積し、十分に活動することができなくなります。そのため記憶力、判断力、集中力などの認知機能の低下を招きます。結果、仕事や勉強、運動などのパフォーマンスが悪化するばかりか、ときには大きな事故につながる危険性もあります。また、生活習慣病をはじめとする、さまざまな病気の発症リスクを高め、症状を悪化させることもあります。
疲労がなかなか取れない
睡眠中は成長ホルモンが多く分泌され、昼間の活動で傷んだ細胞を修復しています。睡眠のリズムが乱れるとこれらの働きが著しく損なわれ、疲れがたまりやすくなります。「毎朝なかなか起きられない」「居眠りをしてしまう」など、睡眠に関するお悩みを抱えている場合は、睡眠のリズムを整えるために以下のことを実践してみましょう。
- 寝る前のアルコールを控える
- スマートフォンやパソコンの操作は入眠の2時間前までにする
- 朝起きたあとに太陽の光を浴びる
- 入眠の2時間前までに入浴し、湯船につかって深部体温を上げる
いずれも簡単に実践できるものばかり。睡眠の質を上げたい方は、まず1つからでいいのではじめてみましょう。
安眠にはヨガがおすすめ!
深呼吸を行いながら体をゆっくりと動かし、筋肉の凝りや緊張をやわらげる「ヨガ」は就寝前にぴったり。自律神経の乱れの改善や安眠効果が期待できます。副交感神経優位の状態(リラックスした状態)に導く、腹式呼吸を意識しながら取り組んでみましょう。
わにのポーズ
お腹や腰、お尻にアプローチできる「わにのポーズ」は、ストレッチ効果抜群。高いリラックス効果のほか、骨盤の歪みや姿勢改善なども期待できます。副交感神経を優位にする効果があるため、寝る前に行うと安眠効果抜群です。
仰向けの合蹠(がっせき)のポーズ
「スプタ・バッタ・コナーサナ」とも呼ばれ、ヨガではお決まりのポーズです。股関節をほぐしながら、全身の疲れを解き放ちます。背中に置いたクッションや枕などに体をあずけ、深呼吸を繰り返しましょう。
バナナのポーズ
文字通り、“バナナ”のように半身を緩やかにねじるポーズです。数分間かけてじっくり体全体を伸ばすことで、筋肉の緊張が徐々にほぐれていきます。心地良い伸びを感じることで心身の疲労が解放され、安眠効果が期待できます。
睡眠サイクルを知って眠りの質を高めよう
レム睡眠とノンレム睡眠は、それぞれメリット(重要性)が異なります。両者の特徴や違いを知ったうえで「最初のノンレム睡眠でぐっすり眠れるよう、夜はブルーライトを避ける」「眠りが浅く、すっきり目覚めやすいレム睡眠中に起きるため、朝日が入るようカーテンを明けておく」などの工夫を取り入れていきましょう。安眠ヨガや、入眠前のルーティンを取り入れて、眠る準備を疎かにしないことも大切です。