運動中の水分補給のタイミングは?摂取の目安やおすすめの飲み物を紹介

監修者情報
湯浅 道子
美容家
大手エステティックサロンで8年勤務しトータル美容を学ぶ。コスメコンシェルジュを取得し、雑誌「Ray」のベスコス選定員の経験も。
さまざまなメディアで、思春期世代から更年期世代までの幅広い美容情報の発信、監修をおこなう。
◼︎資格
日本化粧品検定1級・2級
コスメコンシェルジュ特級
コスメ薬事法管理者
薬機法管理者
景表法検定1級
運動中に水分補給が必要なのはなぜ?

体を動かすとのどが渇くため、自然と水分補給を行いますよね。では、のどの渇きを感じていなくても「運動するときは忘れずに水分補給をしよう」といわれるのはなぜでしょうか。
これは「のどが渇いた」と感じたときにはすでに水分不足になっている可能性が高いためです。実際に、山登りやヨガのレッスンなどで、こまめな水分補給を促された経験がある方も多いのではないでしょうか。安全に運動を行うためには、汗や呼気で失われる水分を想定したうえで、こまめな水分補給を行わなければならないのです。
その際に摂取する飲み物は、汗でナトリウムを失ってバランスを崩した電解質を補うため、ただの水よりもナトリウムと糖質を含んだスポーツドリンクがおすすめ!5~15℃くらいのスポーツドリンクであれば、より体への吸収率も良くなります。
運動中に水分を摂取しないとどうなる?
運動中に水分を補給しないと、体内の水分が不足し、さまざまな不調を引き起こします。軽度の脱水症状から始まり、進行すると集中力の低下やパフォーマンスの低下、さらに重篤な症状として熱中症やけいれんを引き起こすこともあります。特に気温や湿度が高い環境では、発汗量が増えるため、より注意が必要です。以下の表に、水分不足による影響をまとめました。
体内の水分が減る割合(体重比) | 症状・影響 |
---|---|
1%(軽度) | のどの渇き、体温の上昇 |
2%(軽度) | 疲労感、集中力低下、パフォーマンスの低下 |
3~4%(中度) | めまい、頭痛、筋肉のけいれん |
5%以上(重度) | 熱中症、意識障害、最悪の場合は命の危険も |
運動をする際はこまめに水分を摂取し、パフォーマンスを維持しましょう。
運動する際に補給する水分量の目安
「運動する前は水をたっぷり飲むけど、運動中は水分補給を忘れがち」という方も多いのではないでしょうか。運動する際の水分補給の目安は、運動前後にコップ1杯、運動中には15~30分に1回200ml程度摂取することが推奨されています。マラソンの給水所は5kmごとに設置されていますが、これはランナーが走ったときに15分程度の間隔で水分補給ができる仕組みとなっています。
運動中に水分補給をするタイミング

夢中で運動していると、ついつい水分補給を忘れがちです。しかし、適切なタイミングで水分を摂ることで、脱水やパフォーマンス低下を防ぐことができます。ここでは、普段から意識しておきたい水分補給のおすすめのタイミングをお伝えします。
なお、本記事で紹介する水分量はあくまでも目安です。気温や運動の強度、個人の体質によって必要な水分量は異なるため、その時々の体調をしっかりと確認しながら、水分補給を行いましょう。
運動前
まずは運動をはじめる前に水分補給を行いましょう。250~500ml程度の水分を運動30分前までに飲んでおきます。一度に吸収できる水分量には限界があるため、一気飲みはNG!ジムやジョギングコースに向かう道中で少しずつ飲みましょう。
運動中
運動の強度にもよりますが、少なくとも30分に一度は水分補給のための時間を確保しましょう。水分量の目安は、コップ一杯(200ml)程度です。ハードな筋トレやトライアスロンなど、強度の高い運動の場合は15分に一度くらいのペースにして、飲む頻度を増やしましょう。ただしトータルの水分量は必ずしも倍量にする必要はなく、のどの渇きに合わせて調整して構いません。こまめに水分を口に含むことを一番に考えて、熱中症や運動パフォーマンスの低下を防ぎましょう。
運動後
運動後は気が緩んでガバガバと水分補給しがちですが、いくら体に良い水分でも一気飲みはおすすめできません。次項でも解説しますが、適量を数回に分けて摂取することが水分補給のコツです。適量を知るには、運動前と運動後の体重を比べるという方法があります。減った体重が自分の体重の2%(60kgの方なら1.2kg)以上になると脱水の可能性があるため、足りなくなった水分を摂取しておきましょう。
また、筋トレ後であれば、プロテインを摂取するのもおすすめです。水分補給と同時にたんぱく質を補うことで、筋肉の回復をサポートできますよ。
関連記事:男性向けのおすすめプロテインを紹介した記事はこちら
運動時の水分補給におすすめの飲み物

運動中のパフォーマンスをサポートしてくれる、おすすめの飲み物をご紹介します。運動時の飲み物は、普段の嗜好品としての飲み物とは異なる目線で「体のための水分補給」であることを一番に考えましょう。
水
運動中の水分補給として誰にでもおすすめできるものは水です。汗の99%は水でできているため、ただの水でも失われた水分補給の役割を十分に果たします。ただし飲みすぎには要注意!水を短時間に必要以上に摂取すると、体液が薄まりすぎてしまう「運動性低ナトリウム血症」を引き起こすことがあります。筋肉がけいれんしたり、めまいやふらつき、倦怠感、吐き気をもよおし、ひどい場合は命の危険もある恐ろしい病気です。安全な水でも、適正量を守って摂取することが大切です。
スポーツドリンク
ナトリウム(電解質)が含まれているスポーツドリンクであれば、ただの水のように体液を薄めてしまう危険が少ないため、よほど飲みすぎない限りは「運動性低ナトリウム血症」の心配はありません。すみやかに体内に吸収されるため、水分補給した後に運動してもお腹の中で水分が揺れるような感覚がなく、快適に運動を楽しむことができます。
また、スポーツドリンクにはハイポトニック飲料とアイソトニック飲料の2種類があります。それぞれ成分や吸収スピードに違いがあり、運動の種類やシチュエーションに応じて使い分けることが大切です。
ハイポトニック飲料
ハイポトニック飲料は、体液よりも浸透圧が低く、水分が素早く体内に吸収されるのが特徴です。糖分が控えめな商品が多いため、運動中や運動直後の水分補給に適しています。特に、長時間の運動や大量に汗をかくシーンでは、効率良く水分を補うために役立ちます。
アイソトニック飲料
アイソトニック飲料は、体液とほぼ同じ浸透圧で作られており、適度な糖分や電解質を含んでいます。市販の製品は糖分が比較的多いため、運動前やエネルギー補給が必要な場面に適しています。ただし、短時間の運動では糖分の摂りすぎを防ぐため、1.5~2倍に薄めるとより適切な水分補給が可能です。
麦茶
麦茶はカフェインフリーでミネラルも多く、水出しでも簡単に作れるため、暑い夏場の作り置きに重宝されている飲み物です。麦茶の原料である大麦には体を冷やす効果もあるため、運動時のほてり解消や熱中症予防には効果が期待できます。ナトリウムやカリウムは含まれていても糖分は少ないことから、ダイエットやボディメイクのために運動している方におすすめです。
運動時の水分補給におすすめしない飲み物
ここでは運動中の水分補給に向かない飲み物をご紹介します。水分なら何でもよいというわけではなく、運動のパフォーマンスや健康状態に悪影響を与えてしまう飲み物もあるため注意が必要です。
カフェインを含んだお茶やコーヒー
コーヒー、紅茶、緑茶などに含まれるカフェインには利尿作用があります。脱水症状を引き起こすほどの害はないという説もありますが、トイレが近くなることは間違いありません。運動中に尿意をもよおすとどうしても集中できなくなってしまうため、運動時に多量摂取するのは避けましょう。
また、カフェインを摂りすぎると夜スムーズに入眠できなくなる可能性があります。ぐっすり眠って運動で疲れた体を回復させるためにも、夕方や夜のカフェイン摂取は避けましょう。
糖分を含んだ清涼飲料水
運動中の体には確かに糖分が必要です。しかし、清涼飲料水には過度な糖分が含まれており、血糖値が急上昇して高血糖状態になる可能性があります。高血糖状態になると、体はこれを解消しようとして多くの尿を排出しますが、それによりさらにのどが渇いて水分を欲することとなります。ここでまた清涼飲料水を飲んで同じことを繰り返す状態のことを、一般的に「ペットボトル症候群」と呼びます。ペットボトル症候群になると倦怠感や嘔吐、ひどくなると意識障害に繋がる危険性もあります。
アルコール
本気で運動に取り組む際にアルコール飲料を飲む方は基本的にいませんが、海の家でビールを飲んだり、スキーの合間にロッジで乾杯した覚えのある方は少なくないでしょう。
アルコール飲料は抗利尿ホルモンの働きを抑制してしまうため、水分補給には向きません。抗利尿ホルモンとは、体内の水分量を保つために尿の量を調整してくれるホルモンのこと。アルコール飲料を摂取するとこのホルモンの働きが悪くなり、水分をいつも以上に排出してしまいます。アルコール飲料を飲んで運動すると脱水を引き起こしやすくなるため、基本的には避けたほうが良いでしょう。
さらに、アルコールは睡眠の質にも影響を及ぼします。睡眠の質が低下すると、筋肉の回復が遅れたり、翌日の運動パフォーマンスが低下する可能性があります。適切なコンディションを維持するためにも、運動前後のアルコール摂取には注意が必要です。
運動シチュエーション別の水分補給例
運動の種類によって、必要な水分や栄養素は異なります。適切な水分補給を行うことで、パフォーマンスを維持し、体への負担を軽減できます。以下、運動シチュエーション別のおすすめの水分補給方法を紹介します。
筋トレ
筋肉の分解を防ぎ、回復をサポートするために、BCAAやEAAを含んだドリンクがおすすめ。スポーツドリンクに溶かして摂取すると、血中のアミノ酸濃度を維持しながらトレーニングができます。
ランニング
大量の汗とともに電解質も失われるため、スポーツドリンクや経口補水液が適しています。特に暑い環境では、ハイポトニック飲料を選ぶと素早く水分を吸収できます。
ヨガ・ピラティス
発汗量は比較的少ないため、水や麦茶をこまめに摂ると、体を冷やしすぎず快適に動けます。
屋外スポーツ(サッカー、テニスなど)
長時間の運動では、ナトリウムを含んだスポーツドリンクと水をバランス良く摂取し、脱水を防ぎましょう。スポーツドリンクだけでは糖分が多くなる可能性があるため、適度に水も取り入れると良いでしょう。
運動後の水分補給に関するよくある質問
運動中に水を飲んではいけない説は本当?
「運動中に水を飲んではいけない」という説を耳にしたことがあるかもしれませんが、これは誤りです。運動中の水分補給は脱水や熱中症を防ぐために必須です。確かに、ランニングなどでは呼吸が乱れるのを避けるために、あえて飲まないこともありますが、適度に摂取することが重要です。特に暑い環境では、こまめな水分補給を怠るとパフォーマンスの低下や体調不良を引き起こす可能性があるため、のどが渇く前に水を飲む習慣をつけましょう。
運動後に水分補給すると太る?
運動後に水を飲んだからといって、すぐに太ることはありません。体重が増えたように感じるのは、一時的なむくみや水を摂取した分物理的に体重が増加することが原因です。
ただし、運動後に毎回糖分の多い清涼飲料水を飲んでいると、カロリーオーバーにつながる可能性があります。水や無糖のスポーツドリンクを選んだり、摂取カロリーを意識することで、適切に水分補給をしながら健康的に運動を続けましょう。
運動後にがぶ飲みしてもOK?
基本的に、水分を一度に多く飲むこと自体に大きな問題はありません。ただし、運動直後は食欲が抑えられていることが多く、胃に急激に水分を入れると気分が悪くなることもあります。また、大量に飲みすぎると体液バランスが崩れ、一時的にむくみを感じることも。のどが渇いていても、一気飲みではなく、数回に分けてゆっくり摂取するほうが、体に負担をかけずにスムーズに水分補給できます。
適切な水分補給のやり方を知り快適に運動しよう
適切な水分補給を行うことで、体調を整えながら安全に運動を続けることができます。運動前後の水分補給はもちろん、運動中ものどが渇く前にこまめに水分を摂取することが重要です。ただし、一度に大量に飲むと胃に負担をかけたり、体液バランスを崩したりする可能性があるため、運動の強度や発汗量に応じて適切な量を意識することが大切です。自分の体調を確認しながら、無理のない水分補給を心がけましょう。