妊娠中期のお腹の張りはなぜ起こる?原因と改善方法をご紹介
妊娠中にお腹が張る理由
赤ちゃんがいる場所となる子宮は、内側から子宮内膜・子宮筋層・漿膜(しょうまく)と呼ばれる3つの層から構成されています。子宮筋層は丈夫な筋肉でできており、母体がリラックスしているときはやわらかく、なんらかの刺激を受けた場合は緊張状態になってかたくなる特性を持ちます。この緊張こそが、“きゅうっ”というお腹の張り(子宮収縮)なのです。
妊娠初期・中期・後期別、お腹の張りのサイン
はじめての妊娠の場合、お腹の張り=危険な状態と思ってしまうことも多いですが、子宮収縮には生理的な張りと危険な張りがあります。赤ちゃんの成長に伴って生じる筋肉の反射であれば大きな問題はありませんが、なかには流産や早産、切迫早産の兆候である場合も…。妊娠週数ごとの「張りの特徴」や「お腹が張る理由」を確認し、危険な張りをすぐにキャッチできるようにしておきましょう。
妊娠初期:妊娠発覚~15週
妊娠4週では約4mmだった胎児は、妊娠15週には身長10cm、体重40~100g程度まで成長します。とはいえ、まだ子宮収縮が起きるほどの大きさではないため、一般的に子宮収縮によるお腹の張りは起こりづらい時期です。
この時期にお腹の張りに似た症状(下腹部痛、胃腸の不快感、お腹の重さ)を感じる場合の多くは、子宮が急速に大きくなっていることへの違和感。また、新生児の頭くらいまで膨らんだ子宮によって、周辺の靱帯や子宮広間膜が引っ張られるため痛みを感じているケースもあります。超音波検査で胎児の成長や心拍が確認できていれば、激しい痛みや出血が見られる場合を除き、おおむね問題はないでしょう。
妊娠初期に見られるお腹の張り(例)
- お通じが悪いときのように、お腹が軽く痛む
- お腹がパンパンに張っている
- 腹部で炭酸が膨らんでいるような不快感
- 下腹部が重くて、違和感がある
妊娠中期:16週~27週
「安定期」に入る妊娠中期のお腹の張りは、体を動かすことへの反応(=生理的な張り)である場合がほとんど。張りを感じた場合はベッドに横になったり、ソファに座ったりして体を休ませてあげましょう。多くが問題のない安全な張りですが、強い痛みや出血、長時間の張りが見られる場合は切迫早産や流産、その他の病気の可能性があります。自己判断せず、病院を受診して医師に確認してもらいましょう。
妊娠中期に見られるお腹の張り(例)
- 子宮がきゅうっと硬くなる
- 腹筋に力をいれたときのように、お腹がバレーボールほどのかたさになる
- 急に空気がパンパンに入ったような状態になり、数十秒でまた萎んでいく感覚
妊娠後期:28週~40週以降
いよいよ体が出産に向けて準備をはじめる妊娠後期。張りの回数が少しずつ増え、一日に複数回の張りを感じるようになります。妊娠初期や中期の張りとは異なり、お腹の上からでも子宮のかたちが目で見てわかるほど強い張りが生じるケースもしばしば。外出中や家事をしているときや、なにか用事を済ませてる場合でも、強い張りを感じたら無理をせずしばらく休むようにしましょう。これまでと同様、出血や強い痛みがある場合には迷わず病院を受診してくださいね。
はじめての出産の場合、「これはお腹の張り?それとも陣痛?」と迷ってしまうこともあるでしょう。お腹の張りと陣痛は区別しやすいものですが、心配な場合にはお腹の張りの継続時間と頻度をチェックしてみてください。間隔が10分以内、1時間に6回以上の頻度で起こる場合は陣痛と定義されます。
妊娠後期に見られるお腹の張り(例)
- お腹が張り、下腹部が重く感じる
- ピーンと突っ張るような張り
- 石のようにカチンコチンになって、動きづらくなる
原因別、妊娠中のお腹の張りを改善する方法
頻度や強さに違いはあれど、妊娠中は週数問わず常にお腹の張りを感じるもの。上手に付き合っていくためにも、お腹の張りの改善方法を知っておきましょう。次は「動きすぎや疲れによる張り」「体の冷えによる張り」「便秘やガス溜まりによる張り」が原因で起こる3つの張りについて、それぞれに合った改善方法をご紹介します。
原因①動きすぎや疲れによるお腹の張り
“妊娠中に無理は禁物”と言われるとおり、動きすぎや疲れはお腹の張りの原因となってしまいます。つわりがおさまる「妊娠中期」はもっともアクティブに過ごせる時期ですが、それゆえに仕事や家事を頑張ってしまいがちです。動きすぎや疲れが原因でお腹が張ってしまったときは、なにより休息をとることが大事!同じ姿勢のまま過ごすとお腹が張りやすくなってしまうため、ベッドで横になったり椅子に腰かけたり体勢を変えながら安静にしましょう。
また、強いストレスや過度な緊張もお腹の張りの原因になってしまいます。パートナーに話を聞いてもらったり、マタニティカウンセリングを利用したり、体はもちろん、心も労わってあげましょう。
原因②体の冷えによるお腹の張り
ホルモンバランスの急激な変化やつわり、自律神経の乱れによって、妊娠中は体温調整がうまくいかないもの。また、下腹部が大きくなることにより反り腰や猫背になりやすく、この姿勢の悪さによって血行不良が起こりやすくなります。冷えは子宮内にある血管の収縮を招き、ひいては子宮収縮にも繋がります。体を動かしたりお風呂に浸かったりして、意識的に体を温めていきましょう。
ストレッチで体を動かす
医師から特に注意を受けていない場合は、気分転換をかねて1日30分程度体を動かしてみましょう。ランニングや筋トレなどの負荷の強いトレーニングではなく、心地よいと感じる程度の軽いストレッチやヨガがおすすめです。短時間であっても体を動かすことで血行が促進され、体の冷え改善が期待できます。
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体を温める食材&メニューを選ぶ
食事による冷え改善も非常に効果的。温活で有名なショウガをはじめ、血管を広げて血行を促進する「ビタミンE(かぼちゃ、ほうれん草、ナッツ類)」や「ビタミンB1(玄米、大豆)」などを上手に取り入れていきましょう。一方、スイカやきゅうり、レタス、トマトといった食材は体を冷やしてしまうので要注意。量を減らしたり過熱したり、食べ方を工夫しましょう。
湯船に浸かって体の芯から温める
妊娠中はお風呂に入るのも億劫になってしまいますが、入浴は冷えや腰痛、肩こりの解消・予防に効果的です。体に負担をかけないためにも熱すぎるお湯は避け、ぬるめのお湯にゆっくり浸かりましょう。入浴が難しいときは、末端を温められる「足浴」や「手浴」だけでも十分です。
原因③便秘、ガス溜まりによるお腹の張り
妊娠中は、腸の運動を鈍らせる「黄体ホルモン」の分泌やつわりによる水分不足、運動量の減少などが原因となって、便秘やガス溜まりが引き起こされることもしばしば。軽い便秘であれば数日で改善しますが、あまりに症状がひどい場合にはお腹の張りや不快感を招きます。便秘を防ぐためにも、1日約1.5~2Lを目安に水分をこまめに取っていきましょう。食物繊維を多く含む葉物野菜や根菜、果物、海藻、キノコ類を食べるのもおすすめです。
また、前述したとおり適度な運動は、便秘解消だけでなく冷えの改善にも効果的です。無理のない範囲で、ストレッチやヨガなどの軽い運動にトライしてみましょう。
初期の不快感から後期の張りや陣痛まで、妊娠期間中は「お腹の張り」をずっと感じるもの。胎児が成長するにつれて頻度も増えていきます。軽い運動や入浴など、本記事でご紹介した改善方法を試しながら、上手に付き合っていきましょう。