産後の女性にオススメしたいヨガポーズ3選。産後の骨盤や体の状態を知り、回復を高めよう
監修者情報
山本 信子
2015年にヨガの聖地であるインドのリシュケシュにて資格を取得。
夫の駐在に帯同したインドネシアで日本人、インドネシア人の女性向けにヨガレッスンを行う。インナーマッスルを鍛える動きのあるレッスンが得意。マタニティヨガ、子連れヨガクラスの指導経験あり。
■所有資格:全米ヨガアライアンス(RYT200)/ キッズヨガ指導者養成講座
産後の体の状態
妊娠中の骨盤は、赤ちゃんが育ちやすい環境をつくるため徐々に広がっていきます。そのうえ、分娩時には赤ちゃんが骨盤の間を通って産まれてくるため、その通り道となる骨盤がさらに広がるのです。つまり、出産後の骨盤はバラバラに広がった非常に不安定な状態。その結果、骨盤周辺を中心とする体の痛みを感じやすくなったり、サイズや体重が戻らなかったりという悩みが生じるのです。
ちなみに、「骨盤の歪み=骨が曲がった」と思われる方も多いですが、骨は非常に硬い物質であるため伸び縮みすることはありません。骨盤は複数の骨によって成り立っており、実際には骨と骨の間をつなぎとめている靭帯や筋肉が緩むことで骨盤が広がります。
産後のヨガはいつからできる?
産後ヨガの開始目安は出産方法によって異なり、自然分娩の場合で早ければ産後1ヶ月後、帝王切開での出産の場合はゆっくり体を休める必要があるため2ヶ月後以降と言われています。とはいえ、これはあくまでも“目安”。産後の回復力や体調には個人差があるため、「少しでも早く元に戻さなければ!」と焦ってトレーニングをするのは禁物です。
不安定な状態の骨盤や、使いにくくなってしまっている筋肉にいきなり強い負荷をかけてしまうと、体を痛める可能性もあるため注意しましょう。無理のない範囲で骨盤ケアを行うためにも、産後のヨガ開始時期についてはかかりつけの医師に必ず相談するようにしてください。
骨盤のケアに大切なこと
ひらいている骨盤を元に戻すには?
産前産後に緩んだ靭帯や筋肉はおおよそ2〜3ヶ月かけて縮み、骨盤の位置は産後半年程で定着すると言われています。つまり、産後すぐに体型が戻らないのは自然なことなのです。「なかなかボディラインが戻らない……」と焦るのではなく、硬くなってしまった関節や筋肉を使える状態に戻すトレーニングを続けながら、半年〜1年ほどかけてゆっくりと骨盤まわりを安定させていきましょう。
鍛えるべきポイント
産後不安定になっている骨盤を安定させるためには、「腹筋」と、お尻の筋肉である「殿筋」、骨盤の中を通る「腸腰筋(腰から脚を繋ぐ筋肉)」などのインナーマッスルを重点的に鍛える必要があります。インナーマッスルを鍛える際は、一つひとつのポーズをゆっくり、呼吸を意識しながら行いましょう。
骨盤まわりの働きを補助する骨盤矯正ベルトも一時的に効果を発揮しますが、強い締め付けによる血流悪化や冷え性などを引き起こす可能性もあるため、長期間・長時間の使用は要注意。筋トレで体を温めつつ、同時に体も引き締めていきましょう!
ヨガが産後に効果的な理由
- ゆっくりとポーズを行うため、負荷を調節しながら自分のペースで運動できる
- インナーマッスルを鍛えることで、骨盤まわりを調整・安定させる
- 絶えず呼吸をすることで、自律神経を整えられる
- 疲れた心と体をリラックスさせる
慢性的な睡眠不足や抱っこによる体の痛み、慣れない育児への精神的な負担が重なる産後。近年増加する産後うつ病を防ぐためにも、体だけでなく心もしっかりケアしていきたいですね。「赤ちゃんのお世話があるからジムには通えない」「体力が回復していないから激しい運動はつらい」といった産後におすすめなのが、心身ともにリラックスできるヨガです。自分のペースでのんびり行えるため、体力やスケジュールと相談しながら無理なくトライできます。
産後の女性にオススメしたい運動とヨガポーズ3選!
今回は、産後の女性にオススメしたいヨガポーズを3つご紹介します。筋力アップだけでなく、骨盤まわりの筋肉を調整するトレーニングもセレクトしているので、ぜひご自身のペースでトライしてみてください。
①お尻歩き
不安定になった骨盤まわりの筋肉を鍛え、スムーズに動かせる状態に近づけていきます。はじめは思ったように動かせず苦労するかもしれませんが、ゆっくりと少しずつお尻を動かすことで骨盤内部の腹筋・腸腰筋に刺激が行きわたります。骨が床に当たって痛く感じる場合は、布団の上で挑戦してみましょう。
■実際にトレーニングを行なってみましょう
難易度:易しい
- 両足を前に伸ばして座ります。
- 左右のお尻を交互に前に進めてお尻で歩いていきます。両足が床から少し浮くような状態になります。この際、腕を振ると全身運動になります。
- ある程度進んだら、左右のお尻を交互に後ろに進めます。
■お尻歩きを効果的にするポイント
ずりずりと床をお尻で擦って進むのではなく、腹筋を使ってできるだけお尻を高く持ち上げながら、一歩が大きくなるように進みましょう。
腕を振る以外にも両手を上げる、バンザイの状態で行うのもおすすめです。お腹内部を引き上げるためにも、目線は高い位置をキープしましょう。
②チャイルドポーズ
背中や腰、太もも裏など、凝り固まった筋肉をゆったり伸ばせる「チャイルドポーズ」。骨盤まわりの疲れた筋肉をほぐすとともに、腹式呼吸(吸うときにお腹を膨らませ、吐くときにお腹をへこませる)によって内臓が刺激され、消化機能の向上も期待できます。
■実際にポーズをとってみましょう。
難易度:易しい
- 正座で座り、つま先を寝かせた状態にします。太ももの上にお腹と胸を乗せ、腕を軽く前に伸ばしましょう。
- お腹が苦しく感じたら、脚を左右に開きお腹の入る空間を作ってください。
- 耳と肩の間の距離をとり、緊張を和らげます、肘を曲げてもOKです。
- 腹式呼吸をしながら、お腹や背中が膨らんだりしぼんだりするのを感じましょう。
- その状態で、数呼吸繰り返します。
■チャイルドポーズを効果的にするポイント
吸うときよりも、息を吐く時間を長めにとりましょう。ゆっくりと深呼吸することで副交感神経が優位になり、リラックス効果を高めてくれます。
頭に血がのぼるような感覚になった場合には、おでこの下に手のひらや腕を入れて高さを出しましょう。クッションを抱え込むようなスタイルで行ってもかまいません。
③橋のポーズ
お尻をしっかり持ち上げることで、骨盤まわりの筋肉を強くする「橋のポーズ」。背中を反り、胸を開く動作によって背筋や肩まわりの筋肉に刺激が届き、肩や背中の凝り解消にもつながります。
■実際にポーズをとってみましょう
難易度:普通
- 仰向けの状態で、膝を曲げて足裏を床につけます。膝とかかとの間はこぶし1個分程度開きます。
- 吸う息とともに、足裏で床を押しながらお尻を持ち上げ、手を組みます。余裕のある方はかかとをとらえましょう。
- お尻を上げたまま数呼吸繰り返します。さらに頑張れる方は足裏で強く床を踏み、肩甲骨を寄せて胸を開きながら顎を引きましょう。
- 吐く息とともに腰を下ろします。
■橋のポーズを効果的にするポイント
お尻を高く持ち上げるときは、膝が開いてしまわないように。足裏の内側(親指、かかとの内側)で強めに床を踏み、ももの筋肉(内転筋)を効果的に鍛えましょう。
ヨガで心身をリラックス!産後のママの骨盤ケアに役立てよう
産後の体は予想以上に大きなダメージを受けています。そのため、のちの数十年を健やかに過ごすために産後ケアは非常に重要な意味を持つのです。時間や体力に制限のある時期だからこそ、おうちで簡単にトライできるヨガは産後にぴったり。腰痛や肩こり、不眠によるストレスなど、多くのママを悩ませる産後トラブルを軽減するためにも、ぜひ筋力アップや骨盤ケアに効果的なヨガを日常に取り入れてみてください。