腕立て伏せ(プッシュアップ)の効果的なやり方とは?初心者向けに正しいフォームを解説
監修者情報
渡邉 輝
フィットネスインストラクター
「健康」に関する正しい知識を多くの人に届けるために、実体験や科学的根拠のある情報を発信する理系健康ライター。
ベンチプレスなどの重さを競う「パワーリフティング」の現役選手としても活躍中。
◼︎資格
・NSCA-CPT(全米公認パーソナルトレーナー)
腕立て伏せ(プッシュアップ)で鍛えられる部位とは?
腕立て伏せ(プッシュアップ)を行うと、主に以下の筋肉を鍛えられます。
- 腕:上腕三頭筋
- 肩:三角筋(前部、中部)
- 胸:大胸筋
- 体幹:腹筋、背筋
腕の筋肉はもちろん、肩、胸、体幹にもアプローチできる腕立て伏せ。上半身を重点的に鍛えたい方にとっては、とくにおすすめのトレーニングです。
腕立て伏せ(プッシュアップ)に期待できる効果
腕立て伏せ(プッシュアップ)を継続して行うと、以下の効果が期待できます。
- 上半身の筋力強化
- 基礎代謝の向上
- 骨量(骨密度)の増加
上半身の筋肉を鍛え、体を大きくするためには、胸や肩、腕などにある大きな筋肉を鍛える必要があります。
上半身の筋肉量ランキング | 筋体積(cm3) |
---|---|
①三角筋 | 792 |
②大胸筋 | 676 |
③上腕三頭筋 | 620 |
④広背筋(背中の筋肉) | 550 |
⑤僧帽筋(背中の筋肉) | 458 |
参考文献:石井 直方 荒川 祐志「筋肉の使い方・鍛え方パーフェクト事典」
腕立て伏せは筋体積の多い三角筋、大胸筋、上腕三頭筋を同時に鍛えられるため、効率的に上半身を鍛えられます。また、筋肉量が増えると体脂肪を燃焼しやすくする「基礎代謝量」もアップするため、体全体のシェイプアップにもつながります。
筋トレや有酸素運動を行うと、骨量が増加して丈夫な体になります。とくに負荷をかけて行うトレーニングは骨に刺激が入りやすく、体重が負荷になる腕立て伏せは、骨量を増やすトレーニングとしておすすめです。
参考:厚生労働省「骨粗鬆症予防のための運動 -骨に刺激が加わる運動を」
三角筋を鍛えるトレーニングは、腕立て伏せに似ている種目が多いので、上半身全体を鍛えたい方は下記の記事も参考にしてみてください。
関連記事:三角筋のトレーニングについて詳しく解説している記事はこちら
【動画あり】腕立て伏せ(プッシュアップ)の基本フォーム
腕立て伏せは、自重トレーニングのなかでも負荷が大きいトレーニングです。誤ったフォームで行うと筋肉や関節を痛めてしまうことがあるため、基本フォームとポイントをマスターしたうえで実践しましょう。
基本の腕立て伏せのやり方
- 床に膝をつき、両手は肩幅の1.5倍ほどに開いて床につけます。
- 膝を床から離し、頭からかかとまで一直線になるような状態を作り、顔は床に向けます。
- 無理のない範囲で、肘を曲げながら体を下ろします。
- 肩と肘の位置が平行になるところまで、体を下ろしてから、両手で床を押して2の体勢に戻ります。
- 10〜15回を1セットとし、3セット行いましょう。
基本の腕立て伏せのポイント
手と脚のみで体を支える腕立て伏せは、運動初心者の方にはハードルが高いかもしれません。難しい場合は膝を床についた状態からはじめ、徐々に膝を浮かせた状態へステップアップしていきましょう。
また、以下の体勢で腕立て伏せを行うと、別の筋肉に負荷がかかったり、腰や肩などの筋肉や関節をケガしたりしてしまいます。
- お尻が上がっている
- 腰が反っている
- 首や肩がすくんでいる
該当する方は、基本の手順を意識して再度実践してみましょう。
【部位別】腕立て伏せ(プッシュアップ)の派生フォーム
腕立て伏せはバリエーションが豊富で、狙いたい部位ごとにトレーニングをアレンジすることができます。ここでは、部位別の腕立て伏せを3つ紹介します。
トレーニング名 | とくに鍛えられる部位 | 対象者 |
---|---|---|
ナロープッシュアップ | 上腕三頭筋、三角筋 | 初心者~中級者 |
リバースプッシュアップ | 上腕三頭筋 | 初心者~中級者 |
ダンベルプッシュアップ | 大胸筋 | 中級者~上級者 |
ナロープッシュアップ|上腕三頭筋、三角筋
ナロープッシュアップは、腕立て伏せの手幅を狭くしたトレーニングです。大胸筋への刺激が減る一方、上腕三頭筋、三角筋への負荷が強くなります。
ナロープッシュアップのやり方は以下のとおりです。
- まずは床に膝をつき、両手は肩幅程度に開き床につけます。
- ゆっくりと床から膝を離しながら、頭からお尻まで一直線になるような状態を作り、顔は床に向けます。
- 肘が外側に開かないように意識しながら、肩と肘が平行になるまで体を下ろします。
- 2の状態に戻ります。
- 10〜15回を1セットとし、3セット行いましょう。
肘を横に開いてしまうと、肩や肘に過度な負担がかかります。ケガを防ぐためにも、外側に開かないように意識しながら体を下ろしてください。
膝付きの動作に慣れてきたら、さらに負荷を上げて筋肉に刺激を与えるためにも、膝を浮かせてみましょう。
リバースプッシュアップ|上腕三頭筋、三角筋
リバースプッシュアップは、体を天井側に向けて行う腕立て伏せです。通常の腕立て伏せと動作が大きく異なるため、上腕三頭筋や三角筋、広背筋の筋肉をメインに鍛えられます。
リバースプッシュアップのやり方は以下のとおりです。
- 体育座りで床に座ります。
- お尻からこぶし2個分後ろの位置に、手の指が体側を向くようにして両手を床に付けます。
- 手を肩幅程度に開き、お尻を浮かせて手と足で体を支えます。
- 肘を後ろに曲げる意識を持ちながら、体を床につかないギリギリの位置まで下ろします。
- 両手で床を押し3の体勢に戻ります。
- 10〜15回を1セットとし、3セット行いましょう。
肘を曲げずに行うと、お尻を上下に動かす「ヒップリフト」のような動作になってしまい、上半身への負荷が弱まってしまいます。無理のない範囲で、肘を曲げるように意識しましょう。
ダンベルプッシュアップ|大胸筋
ダンベルプッシュアップは、ダンベルを握りながら行うトレーニングです。通常の腕立て伏せよりも可動域が広がるため、大胸筋に強い負荷をかけられます。
ダンベルプッシュアップのやり方は以下のとおりです。
- ダンベルを握ったまま床に膝をつき、両手は肩幅の1.5倍開いて肘を伸ばした状態で床につけます。
- 頭からかかとまで一直線になるような状態を作り、顔は床に向けます。
- ゆっくりと肩と肘が平行になる位置まで体を下ろします。
- ダンベルで床を押して、2の体勢に戻ります。
- 10〜15回を1セットとし、3セット行いましょう。
通常よりも可動域が広くなるので、勢いよく体を下ろしてしまうと、肩や肘関節を痛めるリスクが上がります。動作スピードをコントロールしながら、トレーニングを行いましょう。
腕立て伏せ(プッシュアップ)を効果的に行う3つのポイント
腕立て伏せは上半身を鍛えるために効果的なトレーニングです。ただ、動作のポイントや正しいフォームを習得しないままだと、ケガをしたり、なかなか筋肉がつかなかったりするかもしれません。
腕立て伏せを効果的に行うための3つのポイントを紹介します。
はじめは負荷を軽減させて行う
無理のないペースで行える姿勢からはじめて、徐々に動作の難易度を上げ、安全に筋肉トレーニングをしていきましょう。
膝つきプッシュアップ
腕立て伏せは1回あたりの負荷が大きく、運動習慣のない方が10回連続で行うのは難しいかもしれません。その場合は、最初は膝をつきながら、腕立て伏せを行ってみましょう。
ウォールプッシュアップ
膝つきの状態でも難しく感じる場合は、壁に向かって行う「ウォールプッシュアップ」からはじめてみましょう。ウォールプッシュアップは壁に手をついて行う腕立て伏せで、負荷が軽く初心者もトライしやすいでしょう。
負荷を上げるフォームに徐々に切り替える
負荷を上げると、対象の筋肉への刺激が強くなるため、効果的に筋肉を鍛えられます。筋肉を効果的に鍛えるためには、「漸進性の原則」「過負荷の原理」に沿った負荷をかける必要があります。
トレーニングの原理、 原則 | 概要 |
---|---|
過負荷の原理 | 負荷の最低ラインを超えないと、 筋肉に対しての効果は得られない |
漸進性の原則 | 同じ回数、強度でトレーニングを続けても、 停滞してしまう |
参考:厚生労働省「運動プログラム作成のための原理原則 -安全で効果的な運動を行うために」
腕立て伏せで負荷をかける方法は、トレーニングレベルによって分けられます。
トレーニング レベル | 負荷をかける方法(例) |
---|---|
易しい | 膝を床につけない、両手の親指と人差し指を近づける |
普通 | 片方ずつ負荷をかける、背中に重りを乗せる |
難しい | 椅子に足を乗せる、片手のみで行う |
トレーニングをはじめて間もない初心者が、難易度の高い方法で腕立て伏せをするのは危険です。あなたのトレーニングレベルや体に合った負荷で、筋肉に刺激を与え続けましょう。
可動域を広げる
腕立て伏せの可動域を広げると、大胸筋や三角筋、上腕三頭筋への負荷が上がり、効率的に上半身を鍛えられます。ダンベルや本など、高さを確保できるもので問題ありませんが、プッシュアップバーを利用すると効果的です。
プッシュアップバーは、大胸筋などの負荷を上げるだけでなく、バーを握りながら行うことで、手首の負担を減らしてケガを防止してくれます。今回紹介したトレーニングにも応用できるので、効果的に上半身を鍛えたい方は持っておくとよいでしょう。
関連記事:おすすめのプッシュアップバーをまとめた記事はこちら
腕立て伏せで上半身全体を効果的に鍛えよう
腕立て伏せは、腕、肩、胸など上半身全体を効率的に鍛えられるトレーニングです。腕立て伏せを行うポイントを事前に押さえておくと、ケガのリスクを減らしつつ、対象の筋肉に刺激を入れられます。
今回紹介した「基本の腕立て伏せ」から実践して、慣れてきたら部位別の腕立て伏せを徐々に取り入れてみましょう。
上半身だけでなく、体幹や下半身も一緒に鍛えたい方は、自宅でできるトレーニングを参考にしてみてください。